Z世代の「とりせつ」|「すぐメンタルって言う」若手は、本当に打たれ弱いのか──産業医が解説
更新日:1 日前
「最近の若手は、すぐメンタルって言うんですよね」
人事ご担当者や管理職の方との打ち合わせで、ここ数年、明らかに増えた相談です。
「すぐ休むし、すぐ辞める。打たれ弱いというか、どう接していいか分からない」──そんな戸惑いの声を、産業医として何度も聞いてきました。
ですが、現場を見ていて思うのは、不調や離職を世代の「打たれ弱さ」だけで説明しないことの大切さです。本人が困っている仕事の場面や、相談しにくい背景まで確認する必要があります。
この記事では、Z世代のメンタルをめぐって企業の現場で起きていることを、産業医・心療内科医の視点から整理します。

Z世代が辞めていくのは「打たれ弱いから」ではない
結論からお伝えします。
Z世代の不調や離職を、「メンタルが弱いから」と決めつけることはできません。
失敗や否定的な評価への不安、仕事のプレッシャー、キャリアの見通しなどは、本人の困りごとを理解する手がかりになります。ただし、すべての若手に同じ特徴があるわけではありません。
「最近の若者は」で片付けず、その人がどのような場面で負担を感じているかを具体的に捉えること。ここが、若手対応の出発点です。
数字で見る、Z世代の現実
まず、感覚論ではなくデータで現状を確認します。
日本生産性本部の2025年の企業調査では、「心の病」が最も多い年齢層として10〜20代を挙げた企業は37.6%でした。2014年の18.4%の約2倍ですが、これは回答企業の割合であり、若者の患者数や有病率が2倍になったという意味ではありません。
パーソル総合研究所の2024年調査では、メンタルヘルス不調の経験者について、次の結果が報告されています。
・過去3年以内に、治療なしでは日常生活が困難なほどのメンタルヘルス不調を経験した人(当時正規雇用者)のうち、勤務先を退職した割合は全体で25.3%、20代で35.9%
・20代のメンタルヘルス不調者のうち、職場への相談に心理的な抵抗感を持つ割合は68.0%
・相談後の対応や評価への不安も、相談のしにくさに関わる論点として示されている
「相談に抵抗感がある」ことと、「実際に相談していない」ことは別です。68.0%という数字を、そのまま相談していない人の割合として読むことはできません。
これらは特定の調査対象についての結果であり、20代全体の退職率を示すものではありません。数字は、相談のしやすさや職場の対応を見直す材料として使いましょう。
労働環境の改善と、相談しやすい関わり方の両方を考える
ここで、多くの企業が見落としているポイントがあります。
労働時間や業務量を見直すことは、不調への対応の基本です。
そのうえで、相談先が分からない、相談後にどう扱われるか不安、といった問題が残ることもあります。
「働きやすさ」と「話しやすさ」は、どちらか一方で十分というものではありません。労働環境の改善とあわせて、本人が困りごとを伝えられる関係や窓口を整えることが大切です。
若手の「価値観」と「ストレス要因」を理解する手がかり
では、本人の負担をどのように整理すればよいでしょうか。
調査では、仕事のプレッシャーや失敗・否定的な評価を避けたい気持ち、キャリア不安などが論点になっています。世代の特徴を本人に当てはめるのではなく、面談で確認する手がかりとして捉えます。
たとえば、周囲との比較や評価が気になる人もいれば、自分の仕事の進め方や成長の見通しに迷う人もいます。具体的な助言を求めていても、自分から質問しにくい場合もあります。
「失敗したくない」「相談すると評価が下がるかもしれない」。そうした不安がないか、本人の言葉で確認していきます。
「正解は知りたいけれど、間違いを指摘されるのが怖い」「自分らしく働きたいけれど、周囲から浮きたくない」。こうした葛藤は、若手に限らず起こり得ます。
本人の葛藤や仕事の背景が分かると、「すぐメンタルって言う」という見方を変えるきっかけになります。
世代の理解を、現場での声かけや仕事の調整につなげたい方へ。管理職同士で対応を共有する場として、若手の不調への対応を学ぶセミナーの内容をご覧ください。
「気合いで乗り切れ」だけではなく、具体的な支援へ
大切なのは、本人の努力だけに解決を委ねないことです。
「分からないことがあれば聞いてきて」と伝えるだけでは、相談しにくさが残る人もいます。相談できる時間や相手、質問してよい範囲を具体的に示すことが助けになります。
では、どう接すればいいのか。
鍵になるのは、不調を「事例性」で捉えること。そして、産業保健職・人事・管理職が、バラバラにではなく一体となって対応する仕組みをつくることです。
具体的には、次のような論点があります。
・不調の「事例性」を、現場でどう見抜くのか
・産業保健職・人事・管理職、それぞれが具体的に何をすべきか
・相談に抵抗のあるZ世代に、どうやって最初の一歩を踏み出してもらうのか
・メンタルケアの「その先」にある、ワークエンゲージメント向上までをどう設計するか
人事・管理職が、まず確認したい3つのこと
1.性格ではなく、仕事上の変化を確認する
遅刻や欠勤、ミス、業務の遅れなど、いつから何が変わったかを具体的に整理します。「やる気がない」と評価する前に、本人が困っている場面を聞きましょう。診断をつけるためのチェックではありません。
2.相談先と、情報を共有する範囲を伝える
上司に話しにくい場合の窓口も示します。誰に何を伝えるのか、本人の意向を確認し、健康情報は必要な範囲で取り扱います。詳しい病状を部署全体に共有することは避けましょう。
3.配慮の内容と、見直す時期を決める
仕事の量・期限・担当範囲など、調整できることを整理します。希望する配慮がすべて実施できるとは限らないため、難しい場合は理由と代替案を検討し、人事・産業保健職につなぎます。
強い不調や安全上の懸念がある場合は、職場だけで抱え込まず医療相談につなげます。
企業向けセミナー・研修のご相談
なべふぁでは、これまでさまざまな企業で行ってきたセミナー・研修の経験をもとに、対象者や職場の課題に合わせた内容をご提案します。
管理職向けのメンタルヘルス対応、人事向けの休職・復職支援、従業員向けのストレス・健康管理など、ご相談の目的に応じて内容をカスタマイズできます。
「若手への声かけを見直したい」「不調の相談を受けた管理職が迷わないようにしたい」など、現在のお困りごとからお聞かせください。
料金はお問い合わせください。
ご相談時には、対象者、人数の目安、ご希望のテーマ・時間・実施方法をお知らせください。個人を特定できる健康情報や診断書の添付は不要です。
若手の不調への声かけや業務調整を、管理職同士で共有したい方へ。なべふぁの研修では、不調への気づき、休職時の対応、復職に向けた連携を扱います。
開催実績:2026年6月18日、エムスリーキャリア株式会社主催「Z世代を育てるためのメンタル対策」。同セミナーの開催日程は終了しています。
まとめ
・不調や離職を、世代の「打たれ弱さ」だけで説明しない
・調査の数字は、対象者と何を測った割合かを確認して読む
・相談への抵抗感と、実際の相談行動を混同しない
・業務負担の調整と、相談しやすい関係・窓口づくりを併せて進める
・人事や管理職だけで抱え込まず、必要に応じて産業保健職へつなぐ
「最近の若手は」と感じたときこそ、目の前の人が何に困っているのか、確かめるところから始めてみてください。
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参考情報
本記事は一般的な情報提供です。個別の医学的判断や法的助言に代わるものではありません。本人の状態や職場の状況に応じて、主治医・産業医・人事等に相談してください。
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