試用期間中の社員が体調を崩したら|人事が知っておくべき対応と産業医の活用法
- Nabefa

- 4月6日
- 読了時間: 7分
「入社して2か月の社員が、急に出社できなくなりました」
産業医として15社以上の企業を担当する中で、4月〜6月にかけてこの相談が集中します。
新卒・中途を問わず、試用期間中の社員がメンタルヘルス不調を訴えるケースは珍しくありません。
しかし、いざ起きたときに「試用期間中だから」と対応を後回しにしてしまったり、逆に過度に慌てて不適切な判断をしてしまう企業も少なくありません。
この記事では、試用期間中の社員が体調を崩した場合に、人事担当者として何をすべきか、そして産業医とどう連携すれば適切な対応ができるのかを、現場の経験をもとにお伝えします。

試用期間中のメンタルヘルス不調は増えている
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和3年卒)によると、大卒3年以内の離職率は34.9%に達しています。
また、20代の精神障害に関する労災認定は243件で前年比+18%(厚生労働省「過労死等の労災補償状況」令和6年)と増加傾向にあります。
背景には、コロナ禍以降のオンライン採用で入社前に職場の雰囲気を十分に把握できなかったこと、リモートワーク中心で相談相手が見えにくいこと、そして「我慢してから爆発する」若手特有の傾向があります。
産業医面談で感じるのは、試用期間中に不調を起こす社員の多くは、能力が低いのではなく、真面目で責任感が強いということです。
「まだ新人なのに迷惑をかけたくない」と限界まで我慢し、ある日突然出社できなくなる。このパターンは業界を問わず共通しています。
「試用期間だから」で判断を誤らないために
試用期間中の不調に直面したとき、人事担当者が陥りやすい対応がいくつかあります。
やってはいけない対応
1. 「まだ試用期間だから、合わなかったということで」と退職を促す
試用期間中であっても、メンタルヘルス不調を理由に安易に退職を勧めることは、労働契約法第16条の観点から問題になり得ます。また、対応を誤れば、SNSや口コミでの企業評判リスクにもつながります。
2. 「様子を見よう」と何もしない
不調の兆候が見えているにもかかわらず、「もう少し頑張ってもらおう」と放置するケースです。メンタルヘルス不調は、対応が遅れるほど回復に時間がかかります。安全配慮義務の観点からも、早期対応が原則です。
3. 上司だけで対応しようとする
「まずは上司が面談して」と現場に任せきりにするケースです。プレイングマネージャー化が進む中、上司もメンタルヘルスの専門知識を持っていないことが大半です。適切な判断ができないまま事態が悪化するリスクがあります。
試用期間中の不調に対する正しい対応ステップ
ステップ1:事実の把握と記録
まず確認すべきは以下の点です。
・いつから、どのような体調不良が続いているか
・業務への影響はどの程度か(欠勤頻度、パフォーマンスの変化)
・本人はどう感じているか(本人の言葉で)
この段階で重要なのは、診断や原因の特定は人事の仕事ではないということです。「何が起きているか」を正確に把握し、次のステップにつなげることが人事の役割です。
ステップ2:産業医への早期相談
ここが最も重要なステップです。
試用期間中であっても、産業医面談は実施できます。むしろ、試用期間中だからこそ産業医に早く相談すべきです。
産業医は、本人の状態を医学的に評価した上で、以下の判断を行います。
・就業の可否 — このまま働き続けて大丈夫か
・就業上の配慮 — 業務量の調整、残業制限、配置転換の必要性
・医療機関への受診勧奨 — 専門的な治療が必要かどうか
・休職の必要性 — 一定期間の休養が必要かどうか
これらは人事だけでは判断できません。医学的な根拠に基づいた産業医の意見があるからこそ、会社として適切な対応が取れるのです。
ステップ3:対応方針の決定と実行
産業医の意見を踏まえ、人事として以下を決定します。
・環境調整で対応するか、休職が必要か
・試用期間の延長が必要か
・就業規則上の休職制度の適用可否(勤続要件の確認)
・傷病手当金の案内
ポイントは、すべての判断に産業医の意見書(または面談記録)を根拠として残すことです。後々のトラブル防止だけでなく、会社としての意思決定の質を担保するためにも不可欠です。
「信頼できる産業医」がいるかどうかで、結果が変わる
試用期間中の不調対応は、ルーティンの産業医業務とは異なります。
・就業規則上の休職制度が使えるかどうかの判断
・試用期間の延長・本採用の可否に対する医学的意見
・本人の状態と職場環境の両面を見たアドバイス
・主治医との連携(診断書の読み方、復職判定)
・会社としての安全配慮義務の履行
これらすべてに対応できる産業医は、実はそれほど多くありません。
月に1回来て書類にサインするだけの産業医では、試用期間中の不調対応は回らないのが現実です。
こうした場面でこそ、普段から職場の状況を理解し、人事と信頼関係を築いている産業医の存在が決定的に重要になります。
よくある質問
試用期間中でも休職制度は適用すべきですか?
就業規則に「勤続6か月以上」などの要件がある場合は、制度としての「休職」は適用できないことがあります。ただし、制度が使えなくても医師の診断書に基づく休養は可能です。この判断は産業医と相談の上、柔軟に対応するのが望ましいです。
試用期間中の社員に産業医面談を受けさせてもいいのですか?
もちろん可能です。試用期間中であっても、会社には安全配慮義務があります。体調不良の兆候がある社員に対して、産業医面談を設定することは、義務の履行としても適切な対応です。
本人が「大丈夫です」と言っている場合は?
本人の「大丈夫」を額面通りに受け取るのは危険です。特に若手は「迷惑をかけたくない」という思いから無理をしがちです。客観的な兆候(遅刻の増加、欠勤、パフォーマンスの低下)が見られるなら、産業医面談を勧めてください。
まとめ:試用期間中こそ、産業医との連携が問われる
試用期間中の社員が体調を崩すことは、決して珍しいことではありません。大切なのは、そのときに適切な対応を、適切なタイミングで取れるかどうかです。
そのために不可欠なのが、信頼できる産業医の存在です。
普段から職場の状況を把握し、人事と顔が見える関係を築き、いざというときに的確な判断ができる。そういう産業医と一緒に仕事をしているかどうかで、試用期間中の不調対応の結果は大きく変わります。
「うちの産業医に相談しても、的確な答えが返ってこない」
「試用期間中の社員への対応に不安がある」
そうした課題を感じている企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
なべふぁの産業医サービス
株式会社なべふぁでは、代表の薮野淳也が産業医として15社以上の企業で活動しています。
外資系大手IT企業から上場企業、スタートアップまで、幅広い業種・規模の企業に対応。心療内科(Stay Fit Clinic)と運動療法施設(CrossFit Aoyama)を自社で運営しており、医療・運動・産業保健の三位一体で従業員の健康をサポートする体制を整えています。
「月1回の訪問で書類にサインするだけ」の産業医ではなく、人事と並走し、一緒に職場の健康課題を解決する産業医をお探しであれば、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社なべふぁ 代表取締役
産業医・心療内科医
薮野淳也





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