部下のメンタル不調を管理職だけで抱えない|人事・産業医との役割分担
部下から体調の相談を受け、仕事を調整し、本人の話も聞く。それでも状況が変わらず、次に何をすればよいか分からない。そんなとき、管理職自身が疲れ切ってしまうことがあります。
本人を支えることと、管理職がすべてを引き受けることは別です。大切なのは、対応する人を増やすだけでなく、誰が何を担うかを決めることです。
この記事では、部下の不調への対応で起きやすい役割の混線を整理します。組織ごとの規程や体制によって担当は異なるため、自社の運用を確認するためのたたき台としてご覧ください。

管理職に集まりやすい、三つの判断
『今日の仕事を減らすか』『休職制度を使えるか』『医学的に仕事を続けられるか』。似た話に見えても、必要な情報と判断する立場は異なります。
仕事の判断:担当、優先順位、締切、現場で行う調整
制度の判断:勤怠、休暇・休職、申請の手続き、社内規程
医学的な評価:健康状態や業務への影響について、医師等が専門的に評価すること
医師の意見があれば現場の調整が自動で決まるわけでも、上司が本人と話せば制度の条件が変わるわけでもありません。それぞれの情報を持ち寄って、会社としての対応を組み立てます。
役割分担の例
管理職:現場の状況を整理し、権限の範囲で仕事を調整する
担当業務や直近の変化、本人が困っている場面など、日常の仕事の情報を整理します。できる調整と、自分だけでは決められない調整を分け、人員や権限が必要なら上位者や人事に相談します。
診断や治療方針を決めることまで引き受ける必要はありません。『なぜ治らないのか』を上司が追及しても、業務の調整は進みにくくなります。
人事:制度と手順を確認し、関係者の動きをそろえる
申請書類、相談窓口、社内での決裁や連絡の順番などを確認します。現場に対応を依頼するだけでなく、管理職が何に困っているかも聞き、判断が止まっている箇所を整理します。
産業医・産業保健スタッフ:健康と仕事の接点を評価・支援する
医師による医学的な評価や、保健師等による相談支援を、実際の業務情報と結びつけます。『デスクワークです』だけでなく、対人対応、出張、締切、残業などの具体的な負担を伝えると、検討すべき点が明確になります。
厚生労働省「こころの耳」の産業保健スタッフ等によるケアでも、管理職などと連携する支援の考え方が紹介されています。産業医がいない場合も、一人で判断せず、利用できる社内外の窓口を確認します。
主治医:治療の立場から助言する
主治医は診療を通じて健康状態を評価します。一方、会社の仕事や配慮の選択肢をすべて把握しているとは限りません。連携が必要な場合は、本人への説明や必要な手続きを整え、業務の情報を適切に伝えます。
『人事に相談した』だけでは、担当が決まったことにならない
次のような説明用の場面を考えてみます。管理職は人事に相談済みなので返事を待ち、人事は管理職が本人と調整していると思っている。本人から見ると、何も変わっていません。
この行き違いを避けるため、引き継ぎでは次の四点を明確にします。
何を相談しているか:制度の確認、業務調整、専門的評価など
誰が次に動くか:本人への連絡や確認をする担当者
いつまでに返すか:返事や状況確認の予定日
それまでどうするか:暫定的な仕事の扱いと、悪化時の連絡先
記録は、細かい病歴の共有よりも、仕事上必要な対応が分かることを重視します。健康情報の共有範囲や保管方法は、社内の取扱規程と担当者の助言に沿って確認してください。
管理職自身の負担も、調整の対象にする
部下の仕事を引き取った結果、管理職の残業が増え、相談対応が休日まで続くなら、支援体制そのものを見直す必要があります。
通常の連絡時間、緊急時の窓口、代わりに対応できる人を決めておきます。『困ったらいつでも私に連絡して』という約束を一人だけで背負わず、会社として連絡経路を整える考え方です。
管理職にも睡眠や体調、仕事への影響が出ている場合は、自身の相談や受診を後回しにしないでください。本人への支援と、支援する側の健康の両方を扱います。
連携を練習する研修で、何を決めるか
研修では、制度の説明を聞くだけでなく、架空の事例を使って『この段階で誰に何を渡すか』を確認する方法があります。実在する社員の相談内容を、そのまま教材にする必要はありません。
不調に気づいたときの第一相談先
業務の調整を誰がどこまで決められるか
医師等の意見を確認する手順
担当不在時の代替窓口と、次の確認日
なべふぁでは、気づき・休職・復職の場面を通して、管理職と人事が対応を考えるセミナーを実施しています。
よくある質問
産業医に相談すれば、会社側の判断をすべて任せられますか?
産業医の専門的な意見と、会社としての業務・制度上の判断は区別が必要です。本人の状況、医師等の意見、現場で可能な調整、社内規程を確認し、担当者が連携して対応します。
セミナーを頼むために、今の産業医を変更する必要はありますか?
なべふぁでは、現在の産業医契約を変更せず、セミナーのみのご依頼もお受けしています。既存の体制を踏まえて、対象者や困っている場面をご相談ください。
共通の手順を持つためのセミナー相談
『現場と人事の間で対応が止まる』『担当者ごとに説明が変わる』など、実際に困っている場面を起点に内容を検討します。個人を特定できる情報は、最初のお問い合わせには不要です。
セミナーの実施形式・内容を相談する。料金は対象者や実施方法を伺ってご案内します。
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執筆者
薮野 淳也|株式会社なべふぁ 代表取締役・産業医・心療内科医
企業の産業保健業務と、Stay Fit Clinicでの働く方の診療に携わっています。著書『産業医が教える 会社の休み方』(中公新書ラクレ)。プロフィール・会社紹介
本記事は一般的な情報と実務上の整理例です。個別の診断・治療や法的判断に代わるものではありません。紹介画像は生成したイメージであり、実際の参加者・開催風景ではありません。内容確認・更新日:2026年10月7日。






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